「謝りなさいよ!人にぶつかっておいて謝罪もないなんてどういうつもり!?」

「な、夏乃、別にいいよ・・・?」

「よくない!」



手についた砂を払いながら夏乃の視線を追いかけると、拓巳と同じ制服を来た一人の男の子。

どうやら、彼があたしにぶつかったようだ。

ばちっと、彼と視線が合った。

瞬間、彼は一気に赤くなり、そして真っ青になると一目散に走り去ってしまう。

(顔色の忙しい人だなぁ)

「ちょっと!」ともう一度夏乃は怒って声を上げるけれど、あたしは苦笑。

今のあたしを知ってる雰囲気から推測すると、

多分、あたしが拓巳に会いに行ってるときにあたしを見てる不特定男子の一人なんだろうなぁ。

もしかしたらラブレターくれた子の一人だったりして・・・。

なんて、夏乃には言えない。(ばれてるとは思うけど)



「ったく」



とプリプリ怒りながら夏乃はあたしに「知ってる人?」と問いかけた。

「知らない」と答える。

うん、“あたしは”、知らない。向こうは知ってるかもしれないけど。

そして、やっぱりこれもばれてるんだろうなぁなんて思う。



「夏乃が怒ってるとこ、久しぶりに見た」

「私も久しぶりに怒ったかも」

「嬉しいよ。夏乃が怒ってくれたの、あたしのためだし」

「このプラス思考女」



大切な美貌の一部を傷つけられたんだから少しは怒ればいいのに。

皮肉交じりの夏乃の言葉だけど、あたしはへへへと笑った。



「大丈夫?」

「え?」



そこに更に声を掛けられた。

あまりに唐突過ぎて、無防備に振り返ってしまうあたし。





そして、

身体中に

電流が走った。