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「いってきまーす!」



家の中に声を掛けると、「いってらっしゃーい」というお母さんの声が返ってくる。

うーん、今日もいい天気!

広い広い空に両手を伸ばして背伸びしながら、あたしは綺麗な空気を胸いっぱい吸い込んだ。

朝一でランニングもしたし、

今日の髪はカンペキだし、

昨日パックしたせいか化粧ノリはいいし、

なんかいい日になりそうだなー、なんて。



「おはよう、妃那」

「夏乃(なつの)!」



そんなことを思っている私に掛かる、落ち着いた声音。

首を向ければ案の定の親友がいて、私も「おはよう」と笑った。



「夏乃にしては早いね、珍しい」

「たまにはね」



セミロングで切りそろえられた漆黒の艶やかな髪を払いながら夏乃は微笑む。

田原夏乃(たはら なつの)。

日本人形みたいな容姿の夏乃は典型的大和撫子。

中学からの同級生で、今までずーっと同じクラス。

どちらかと言えば洋風なあたしとは正反対だけど、あたしは夏乃が大好き。

だって、あたしの全部を知ってる大親友だもん!



「夏乃、今日のあたしの運勢は?」



学校に向かって二人で歩きながら問いかける。

夏乃は、真っ直ぐ前を見つめながら「大吉」と小さく呟いた。