ぜーったい考えたでしょーっ!!
口を尖らせて妃那が俺を睨みつける。
・・・・・・だからさ、なんでそこで上目遣いになるかな。
ぐ、と俺は詰まった。
それはその内容に、可愛さに、そして理性との格闘に。
───こんな関係は決して嫌いじゃないのだが、俺にとっては“我慢”の連続だ。
妃那は変なところに天然で鈍感だから、こうした無意識の可愛さに遭遇したときの俺は対処の仕方に一緒に迷う。
いつか爆発すんじゃねぇの、と我ながら心配になる。
ただ、妃那に嫌われたくない、の一心でどうにかこうにか堪えているけれど。
あぁぁぁ、だから俺!黒い俺!「襲っちまえ」とか簡単に言うんじゃねぇ!!
そうだ白い俺!「いけない」んだよ、そんなこと!!負けるな!!
「・・・別に拓巳にならいいのに」
「何か言ったか?」
妃那から視線を逸らして必死に自分の中の天使と悪魔の戦いを耐えていると、
不意に妃那が何かを呟いた・・・気がした。
聞き取れなかった俺が聞き返すと、
妃那は声にならない声を上げて俺をさらに睨みつける。
今度の視線には、きちんと本気の怒りが含まれていた。
「~~~っ!!!言ってないよ!拓巳のバカ!このヘタレ!!」
「なんで悪口言われるんだよ!!」
「自分で考えなさいよ!!」
怒鳴りきってからふんっと視線を逸らす妃那。
その頬と耳は、少しだけ赤い気がする。
───もしかして、俺、聞き逃してはいけない一言を聞き逃したんじゃないだろうか。
一抹の不安と焦りに襲われて「悪かったって」と平謝りして妃那に手を合わせた。
それでも妃那は、前を向いてもくもくと歩く。
あぁ、俺こうやって大事なことを逃すからいつまで経っても色んな奴にからかわれんだよなぁ・・・。
がっくりと、肩を落とす。
そうするしかない。