そして麻里さんは、いまや妃那の二番目の親友に。

「妃那ちゃんのおかげで最低男と別れられた!」

とウキウキしていたし、

強気な性格が合ったのか、意気投合するまでに時間は掛からなかった。

妃那も妃那でなんのわだかまりもなく麻里さんと付き合っているようだし、

まぁ結果オーライなのかもしれない。

(ただ、俺をからかうのだけはやめて欲しいと切実に思う)



洋平先輩は、俺と妃那にただただ頭を下げた。

麻里さんとのことを知っていたにも関わらず、何も言わなかったと。

けれど、このことは洋平先輩には何も否がなかった。

だって洋平先輩は、「瑞樹先輩が妃那を好き」ということしか知らず、

告白やデートの件は知らなかったのだというのだから。

だから俺はもちろん、妃那だって責める気はないようだった。

今は瑞樹先輩の穴埋めとしてキャプテンとして頑張っている。



俺たちを生暖かい目で見守る双子も健在だ。

相変わらず脅されたり、馬鹿にされたり、まぁろくでもない扱いには変わりないけれど。

こいつらがいなきゃどうにもならねぇってことは証明済み。

いい親友に恵まれたと思ってる。

・・・言ってやらないけど。



そして。



俺と妃那の関係は、と言えば。



「拓巳、今日もランニング付き合いなさい!」

「へぇへぇ」

「返事ははい!でしょうが!!」



まったくもって変わっていない。

更にレベルアップした女王様振りを存分に発揮しながら、今日も今日とて俺はパシリに他ならない。

玄関で仁王立ちになってる妃那の顔はそれはそれは生き生きしている。

(絆創膏と、缶ジュース代と、タオルと・・・あと何を持っていこうか)

ったく、俺コクったよなぁ?

あれ、まさか夢だったのか?

そう思ってしまうほど、なんら変化がない。

妃那用の荷物を持ちながら玄関に向かうと、すでにドアを開けていた妃那に「遅い!」と怒鳴られた。

いきなり来られて1分で支度できた俺を褒めて欲しいのだけど、そんな常識はやっぱり通用しない。

まぁそれもいつものこと。