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一通り泣き終わるまで、拓巳は黙ってあたしを抱き締めてくれていた。

まだあたしはしゃくり上げていたけれど、ある程度気持ちは落ち着いて。

ハッと我に返ったとき、あたしは不意に恥ずかしくなった。



「ご、ごめっ・・・めっちゃあたし泣いて・・・っ!!」

「いいよ、今更だろ?」

「いや、でもあの・・・っ、そのシャツ絶対涙と鼻水でぐちゃぐちゃ・・・」

「洗濯しに来いよ、お前が」



出来ないの分かってるくせに。

からかうような笑いを含んだ声に、あたしを元気付けようとしてくれてるのが分かってあたしも笑った。



「妃那?」

「ん?」



突然、頭に触れていた拓巳の手が止まった。

あたしは聞き返したのに、拓巳はいつまでたってもそれ以上言葉を発さなくて。



「たく・・・!!」



名前を呼び返そうとした。けれどそれは途中で遮られた。

頭に回っていたはずの手があたしの頬に触れ、そっと上を見上げさせられた。

突然の行動に驚いて自分の今の顔を恥じる間もなく、

拓巳を非難する暇も無く。

ただまっすぐに拓巳の綺麗な目に吸い込まれた。



「好きだ、妃那」



低い声があたしの鼓膜を震わせる。

その言葉を聞いた瞬間、

呼吸が出来ないくらい胸の奥が熱くなって、

体全体が震えた。

拓巳の真剣な目に捕らわれて、あたしは身動き1つ取れない。

拓巳の気持ちが痛いほど伝わってきて、

あたしは上手く言葉が出ないでいた。



「俺じゃ、ダメか?」



拓巳の両手があたしの顔を包む。

そっと優しい力で持ち上げられて、より拓巳の目とあたしの目がぶつかる。

それはいつになく真剣で、それでも少し気弱そうで、切なげに揺れていた。