『・・・恋、じゃないと思うんですけど。

でも、いつだって側にいてくれたのはその人で、

いつだってあたしを見ていてくれたのもその人で。

───・・・あたしも、いつだって彼のことを思い出さないときはないんです』

『妃那ちゃん・・・』

『今少し彼を怒らせちゃったみたいで、

全然口も利いてくれないんですけど。

それが自分でも驚くくらい寂しくて、悲しくて、

胸にぽっかり穴が開いたみたいで・・・

今瑞樹先輩と付き合っても、

きっとあたしはその穴を埋めるために先輩を使ってしまうと思うんです。

こんな半端な気持ちで、瑞樹先輩とお付き合いすることは出来ません』



自惚れ、かもしれない。



けれど、


だけど、


それでも、




妃那の言う“男”はきっと








───俺の、こと。





恋じゃない、とは言っていた。

それでもなんだか胸に言葉に出来ない熱い気持ちがこみ上げてきて、

妃那の寂しい悲しいという言葉に罪悪感を感じて、

それでも俺のことを思ってくれていることがどこか嬉しくて。

思わず、



涙がこみ上げそうになって。