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第二体育館にたどり着いた俺の目に映ったのは、予想外の光景だった。

妃那と瑞樹先輩がいる。

もしかしたら、妃那が襲われてるかもしれない。

そんな予想の中たどり着いたそこには・・・人が溢れかえっていた。



「瑞樹とはね!私ずっと付き合っているのよ!!

アンタなんてどうせ男なら誰でもいいんでしょう!?

なんだって手に入ると思ったら大間違いなのよ!!」



中心からはそんな怒鳴り声が聞こえた。

まさか、は本当に事実だったらしい───きっと言葉の矛先は妃那。

妃那は最悪の形でその事実を知ったわけだ。

思わず顔が歪む。

今妃那がどんな気持ちでいるか、どんな表情をしているか、考えているだけで爆発しそうな怒りがこみ上げてくる。

キレた息を整えて近付いていくとざわめきの声の内容が段々聞き取れていく。



「え、何何?修羅場?」

「妃那ちゃんが瑞樹先輩取ろうとしたらしいよ」

「うっそ、信じられないー」

「確かに可愛いけどさぁ、常識はずれだよね」

「超軽蔑するんですけどー」

「調子乗りすぎでしょ」

「っていうかー、妃那ちゃんしつこいらしいぜ」

「マジ自意識過剰」

「そんな女だと思ってなかった」

「迷惑過ぎじゃない?」



何も知らずに、勝手なこと言うんじゃねぇ。

ただただ俺の中では怒りが募って、力任せに人ごみに突っ込んだ。

迷惑そうな顔も、俺に対する文句も、どうでも良かった。

そしてやっと見えた妃那の顔には絶望も怒りも無くて・・・ただ“無”で。

それでもどこか泣きそうに見えて、

きっと自問自答の無限ループに陥ってるのかと思ったら勝手に口が動いていた。



「馬鹿か、てめぇは」