あれから数日。
文化祭当日の今日になるまで、夏乃の言葉が俺の頭から離れなかった。
ただ自分を責め続けた。
どうして側にいながら妃那の気持ちに気付いてやれなかったのか。
どうしてあんな愚かな行動を取ってしまったのか。
そして同時に、妃那への謝罪の仕方がわからなかった。
こんな馬鹿な俺を、妃那は許してくれるのだろうか。
罪悪感でいっぱいで、どんな態度を取ればいいのかわからなくて、
違う意味で俺は妃那を避け続けていた。
そしてもう───今日になってしまった。
「はぁ・・・」
ヘタレヘタレとは言われ続けていたが、我ながらここまで自分が情けないとは思っていなかったさ。
ガツンと土下座でもする勢いで謝ればいいだけの話ならいい。
妃那が好き、と自覚してしまった以上、妃那に許されなかったときのショックは倍増しそうだ。
(ここでもやっぱり自分の気持ちを優先させてしまう自分はどうしようもない)
「拓巳!!」
渡り廊下を歩いていると、突然後ろから声を掛けられた。
振り返ると血相を変えて走ってくる双子の姿。
「どうした?」と首を傾げると、「そんな能天気な話じゃないの!」と夏乃に怒鳴られる。
とは言ったって突然すぎて何がなんだか・・・
目を白黒させていると、夏乃より幾分か落ち着いているらしい海斗が口を開いた。
「妃那が、瑞樹先輩に呼び出された」
「え?」
「場所は第二体育館。あそこは企画もないし、人目も付きにくい。
何もなければいいんだけど、妃那普通に・・・おい、拓巳!!」
海斗の言葉を聞き終わるより早く、俺の体は動いていた。
第二体育館。俺の頭にあったのはそれだけだった。
最悪の場合だって考えられる。
そんなことになったとき、妃那が今度こそ手の届かないところに行ってしまうんだろう。
───そんなこと、絶対にいやだ。
今度こそ、俺が守ってやるから。妃那。
俺はただ、無心で第二体育館を目指して走った。
(「ったく、拓巳必死だねぇ」)
(「ほら、海斗行くわよ!私たちには私たちのすべきことがあるじゃない!」)
(「はいはい、お姫様」)