『あたしは 瑞樹先輩のこと好きです』
『じゃぁ・・・』
『でも』
あぁ、そうだ。
『でも やっぱり 付き合えません。
瑞樹先輩は憧れの人だけど・・・瑞樹先輩と付き合う前に、あたしの心には別の人がいるんです』
瑞樹先輩にデートに誘われたとき、
ナンパされたとき、
告白されたとき、
キスしそうになったとき、
いつだってあたしの脳裏に浮かんだのは───
拓巳だった。
『・・・恋、じゃないと思うんですけど。
でも、いつだって側にいてくれたのはその人で、
いつだってあたしを見ていてくれたのもその人で。
───・・・あたしも、いつだって彼のことを思い出さないときはないんです』
『妃那ちゃん・・・』
『今少し彼を怒らせちゃったみたいで、全然口も利いてくれないんですけど。
それが自分でも驚くくらい寂しくて、悲しくて、胸にぽっかり穴が開いたみたいで・・・
今瑞樹先輩と付き合っても、きっとあたしはその穴を埋めるために先輩を使ってしまうと思うんです。
こんな半端な気持ちで、瑞樹先輩とお付き合いすることは出来ません』
ってちょっと待って!!
ハッとあたしは我に返った。
こ、これって瑞樹先輩への過去の自分の発言だけど、今こうやって放送されてるってことは、
夏乃にも、海斗くんにも、何より拓巳にも、
届く わ、け・・・で・・・
「・・・拓、巳」
「・・・」