「呆れた!
さっきまではあんなにウジウジしてあからさまに妃那が好きなのにそんなことも気付けなかったのに」
「ヒトは短時間で成長するんだね、夏乃」
からかうような二人の言葉も、今なら笑って聞き流せる。
本当に俺はいい友人に恵まれた。
改めて、心からそう思った。
「で、それはそうと拓巳」
ふ、と緩んだ空気の中で突然口調が細められる。
「ちょっと気になる情報があるんだ」
そして、そんな不意な海斗の顔つきが真面目なものに変わる。
気になる情報?
繰りかえしつつ、俺も感じた嫌な予感に眉を潜める。
夏乃も同じように瞳にすっと力を込めた。
「瑞樹先輩のことなんだけど───」
そして出てきた言葉に、俺は首をかしげた。
そして、それと同時に自然に頭に浮かんだのは妃那の涙で。
もしかして、アイツ───
(「おう、分かった。教えてくれてありがとな」)
(「どういたしまして」)
(「そういえば話違うけど、拓巳も本当の意味での“初恋”だよね」)
(「妃那みたいないい女が傍に居て、他の女なんて好きになるかよ」)
(「・・・自覚した途端ウザいまでにのろけるのね」)