夏乃は俺たちの中で誰よりも冷静で、俺たちのまとめ役。
あらゆる意味で怖い女だが、それでもちゃんと人の気持ちが分かるヤツだ。
真っ直ぐ目を見つめていれば、きっと伝わる。
そう信じていたのは、決して間違いではなかった。
伊達に友人やっちゃいないさ。
「───・・・おう」
「拓巳君ってそういうところずるいわよね」
やっぱり、そう思って安心して笑うと、夏乃は拗ねたように口を尖らせた。
「いや、さすがに今回は無理かと思ったぜ?」
「私だって本当は土下座されたって認める気無かったわよ」
夏乃は冗談めかしてそう言ったが、もしそうだったら、と考えると多少の恐怖を感じる。
思わず苦笑しつつも、「サンキューな」と夏乃にしっかり礼を告げた。
「でもさ、具体的にどうするわけ?」
はっきり言って、妃那、瑞樹先輩にゾッコンだよ?
そう付け加えながらからかうように俺を見る、先ほどまで黙っていた海斗。
「別になんにも考えてねぇけど」
「けど?」
「とりあえず謝って、なんであんなことしたかちゃんと伝えて、それから“好き”って言ってくる」
その上で妃那が瑞樹先輩を選んだら、俺は素直に引き下がるつもりだ。
生憎、妃那が葛藤するかも知れないだなんて考慮はしてやらない。
どうしてかって、妃那はそんなことで優柔不断になる女じゃないって知ってるからだ。
結果はどうあれ、とにかく俺がしたいことはその3つだけ。