頭上で交わされた会話に俺は頭をあげながら顔を引きつらせる。
俺めっちゃまじめにシリアスなこと話してたんだけど?
けれど、その視界に見えた二人の笑顔に、更に引きつって固まることになるのだが。
「なぁ、拓巳?」
「───なんだよ」
いつのまにか2体になったわら人形の1体を手で弄びながら、海斗は俺に問いかけた。
「俺さ。拓巳の症状の名前もどうしてそう思うかの理由も教えてあげられるよ」
「マジで?」
「どっちでも内容は一緒だけどね」
ふふっ、と笑った海斗の言葉に「私も分かるわよ」と夏乃が付け加えた。
教えてくれ、と頼もうとしたが、その前に「でもね」と海斗は言葉を続ける。
「教えるのは簡単だけど、それじゃぁ意味がない───ずっと、そう思ってたんだ」
「海斗・・・」
「正直、拓巳君がここまで鈍いと思ってなかった。
っていうか、鈍いのは大いに勝手なんだけど、人の親友まで泣かさないでくれるかしら?」
海斗の言葉の先を拾った夏乃は、そう言って怖いぐらい綺麗な笑顔を浮かべた。
もちろん俺が覚えるのは恐怖だけ。
そんなこと分かっているのだろう、夏乃は眉1つ動かすことなく、その顔のまま俺に詰め寄った。
「拓巳君?」
「・・・はい」
思わず敬語になる俺。
「仕方ないから教えてあげるわ・・・海斗が」
「俺か」
「さすがの私でも、そこは“男の友情”に譲ってあげる」
夏乃の言葉に「意味わかんね」と呟くと、夏乃は「拓巳君?」と裏のある笑顔で拳を構えた。
「すみませんでした!!」と瞬間的に頭を下げる俺。
(情けねぇなぁ・・・)
───とは言っても、解決してもらうにはこの2人の力を借りるしかない。