「その考えの内容が多分浅はかだろうなぁっていうのと、
あとは方法の選び方が最悪だっていう怒りかな」
いや、そのセリフの何処にわら人形が必要なんだ!
俺が顔を引きつらせると、「話ぐらい聞こうよ」と海斗が夏乃を説得する。
もちろん本気じゃないわ、って分かりにくいんだよお前の冗談は。
「でも、俺も同感だなぁ。拓巳」
「・・・」
「とりあえずお前の考え話してみなよ」
夏乃から奪ったわら人形を握り締めながら、海斗の目がまた俺をゆっくりと捕らえる。。
その視線は夏乃ととても似ていて、
すごく真っ直ぐで、
妃那を傷つけたと分かっていながらこんな方法しか取れなかった俺を、すごく責めているように感じた。
本当は言わないつもりだった俺の本音。
けれど、その目を見た瞬間ゆっくりと口が勝手に動き出した。
「妃那には、瑞樹先輩がいるだろ・・・」
「「は?」」
視線を逸らしながら紡がれた声は情けないくらいひどく掠れていて、その声が静かな教室に響き渡った瞬間2人は揃って間抜けな声を上げた。
「この間、俺、妃那を傷つけたらしいんだよ。無意識に。
そのことで妃那がすっげぇ泣いて───
なんかもう俺が守りきれねぇって思ったら、急に怖くなって」
俺が近くにいたって意味があるのか。
妃那を傷つけるだけじゃないのか。
俺だって、離れていく妃那をこれ以上見るのは苦しい。
「そもそも妃那にはもう瑞樹先輩っていう存在が出来たんだ。
今更俺が守る云々言う立場でもねぇし、
何よりもう俺には隣に立つ資格は無くなった。
───自分で手放したんだ。妃那を」