「ちょっと妃那っ!!!」



あたしは勢い良く立ち上がると、人目も気にせず教室を飛び出した。

夏乃の慌てた声なんて振り切って、ただ走って走って、

一応有名人なあたしだからあちこちで名前を呼ばれたのは分かったけど、

全部振り切って、あたしは階段を駆け上がった。

誰もいないところに行きたかった。



バンッ



と勢い良く扉を殴るように開ける。

ジンジンした手のひらをそのままに、あたしは外に一歩を踏みだした。


───屋上───


それが、あたしの選んだ場所。

入ってすぐ、フェンスの片隅に目が止まった。

切れる息をそのままに、ふらふらと引きずられるようにそこにたどり着いて、座り込む。



「・・・っ!!!」



たった2週間前。

あたしはここで笑ってた。

拓巳。

夏乃。

海斗君。

瑞樹先輩。

大好きな人たちに囲まれて、幸せで、そんな日常が当たり前だった。

もう拓巳はいない。

瑞樹先輩とも気まずい。

夏乃に嘘をついちゃった。

海斗君に壁作っちゃった。

幸せはどこかに消えて、あたしはたった一人だった。