「もしくは“あたしが代理?そんなのありえない”とか」

そう言いながら夏乃は白いすずらんテープを腕にぐるぐる巻きつけ始める。

夏乃はさすがあたしのこと分かってるなぁ。

そう思って小さく笑いながら、あたしももう1つの白いすずらんテープを手に取った。



「確かに。代理なんてありえない、は多少考えたけど、コンディションは何も考えなかったなぁ」



一端を手に持って、テープを肘まで通してぐるぐる回し始めながら苦笑すると、

夏乃は「そうとう頭ヤラれてるのね」と鼻で笑った。

───確かに、このあたしが自分のコンディションを真っ先に考えないとか天変地異の前ぶれくらい珍しい。



「拓巳に言ってみよっかなー。ミスコン出ることになったよ!って」

「───・・・妃那、自傷趣味あったのね」



夏乃の分かりやすい嫌味に苦笑する。

それでも、あたしは携帯を取り出した。

巻き掛けたすずらんテープを解いてから、

ワンタッチボタンに登録された日生拓巳の名前を呼び出して、メールを作成する。



「ねぇ、妃那」



相変わらずぐるぐるを続けている夏乃に「んー?」と答える。

えっとなんて書こうかなー。

普通でいっか。



「あたし、拓巳君のこと決して嫌いじゃないけどさ、」

「うん」

「もし妃那を泣かせるようなことあったら、いくら拓巳君でも容赦しないからね」



『あたし、ミスコンにで』まで打って、顔を上げる。

手を止めた夏乃と目が合った。

普段どおりの無表情だけど、その瞳の奥にある力に真剣なのだと感じ取れる。



「───夏乃が男だったら、あたし夏乃と結婚したいなぁ」

「あのねぇ・・・私、本気なんだけど?」