「じゃぁこれ企画書ね!
参加者と、アピールで言って欲しいこと、それから課題なんかが書いてあるわ」
「あ、はい」
「最後のところに私のメアドと電話番号書いてあるから。
分からないことあったら何でも聞いてね!」
分厚いファイルの中から、一冊の紙の束を渡される。
明朝体の文字が敷き詰められたレポート用紙の表紙の一番上には
『ミスター・ミスコンテスト』と企画の名前が打ち出されていた。
ぱらぱらと片手で捲ると、確かに一番最後に先輩の名前らしき女性の名前が載っていた。
「分かりました。とりあえず目通しますね」
「うん! 本当にありがとう」
最後にもう一度先輩はお礼を言うと、「仕事があるから」と駆け足で教室を出て廊下を走っていった。
ミスコンかぁー・・・中学生の頃も出てたなぁー。
そんなことをぼんやり考えつつ、『1.企画内容』というところを軽く読み流しながら椅子に腰を戻す。
「すごいねー、さっすが妃那」
「1年で出るなんて異例じゃない?」
「応援してるから、頑張ってね!」
さっきの様子を見てたらしいクラスメートが次々声を掛けてくれる。
あたしは「うん、ありがとう」とお礼を述べて笑顔を作った。
(でもきっと、先輩ほど可愛くない。 だってあたしの笑顔は作り物だから)
「よく引き受けたわね」
そんなクラスメート達がいなくなった頃、夏乃がガムテープとすずらんテープを持ってやってきた。
どうやら“のれん”を作る係らしい。
それを認識しながら、夏乃の言葉に「引き受けないと思った?」と返した。
夏乃は間髪いれずに頷く。
「だって、今の妃那、コンディション最悪でしょ?
きっと“こんなブサイクなあたしがステージにさらされるなんて嫌!”と言うと思った」