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「ていうか、今日妃那どこ行ってんの?」
リビングのソファに向き合って座りながら海斗が出したウーロン茶を飲んでいると、
その不躾な行動をした張本人が唐突にそう問いかけてきた。
どうやら二人は『今日、妃那と瑞樹先輩がデートする』という事実以外なにも知らないらしい。
「んー?分からねぇけど、どっかのアウトレットだった気がする」
「アウトレットって・・・一番近いところでもここから1時間は掛かるわよ?」
「俺の知ったことじゃねぇよ。瑞樹先輩の提案だって妃那のヤツ浮かれてたし」
驚いた様子の夏乃に、投げやりに俺も答える。
俺は散々ウザいまでに妃那に説明されたからな。
あの時の面倒くささと苛立ちを思い出してぐいっとコップ内のお茶を一気に飲み干すと、
双子は顔を見合わせて、それから同時に俺を見た。
「「ヤキモチ?」」
「違ぇ!!!」
だからなんなんだ、こいつらは!!
つーか何しに来たんだっつーの!!
イライラとコップを机に叩きつけると、海斗は「まぁまぁ」とのほほんと笑う。
誰のせいだ!
夏乃は、ふふふと特徴的な笑い方をすると、包み込むようにマグカップを持ちながら俺を見た。
「で、あたしたちは可愛い可愛い幼馴染が自立した感想を聞きにきたのよ、拓巳君」
「え?どっから突っ込めばいいわけ?」
「全部どうぞ?」
「いや“で”って接続詞意味わからねぇし、
さりげなく人の心読んで会話進めてるし、
俺別に妃那のこと“可愛い可愛い幼馴染”とか思ってねぇし、
大体感想とかねぇし、あってもお前らには言わないし」
「随分言うわね」
「言えって言ったのお前だろうがぁぁぁぁっ!!」