「くっそー・・・」
いくら布団にもぐってもいっこうに二度寝が出来ず、俺はイライラとひとり言を呟いた。
朝練だ、妃那と待ち合わせだ、委員会だ、遅刻しちゃまずいときに限って余裕で二度寝出来んのに、
どうしてこういう時には寝れないんだ?
頭を押さえながら枕もとの時計を見たらもう11時、当たり前って言えば当たり前なのかも知れないけど。
(どれもこれも、妃那のせいだっつーの)
今日は妃那と瑞樹先輩のデートの日のはず。
散々アイツが騒いでたから、間違えるはずもない。
なのに、
───どうしてアイツ来ねぇんだ?
妃那のことだから「洋服のチェックしなさいよ!」とでも叩き起こしに来ると思ったのに。
その妃那が・・・来ない。
それが予想外すぎて、
っつーか自分で思ってる以上に自分が予想外と思ってるらしくて、
全然寝付けやしない。
(アイツまさか寝坊してるとか?いやいや、遠足や運動会の日は必ず時間通りに起きるタイプだし)
(でも“まさか”を起こすのが妃那だからな・・・念のためメールするか)
(ダメだ、もしこれでもうデート中だったら後が怖ぇ)
(あぁ、直接瑞樹先輩に好みの服のタイプを聞いたとかそういうことか)
(───いや、妃那にそんな度胸あったか?)
「~~~ッ、だぁあぁぁあぁっ、寝れねぇ!!」
思わず叫んだ瞬間だった。
ピーンポーン
マヌケなインターホン音が静寂を切り裂く。
チッ、なんだよ・・・待ち合わせ時間が遅かっただけっつーことか?
わざわざ悩んだ俺がバカみたいだ。
どんどん、とインターホンも待てないといわんばかりにけたたましく殴られるドアの音を聞きながら、
「はいはい」と俺は自室を出た。
階段を降りてまっすぐ玄関へ、そして「なんだよ」とドアを開いて・・・固まった。