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「今日一日で寿命が縮まった気がします・・・」

「何それ」



あたしの言葉に、瑞樹先輩はケラケラと声を上げて笑った。

全部瑞樹先輩が悪いのよ!

あまりにもあたしをときめかせる言葉ばっかり言うから!!

───なんて言えるはずもなく。



「なんでもないですー」



そう言って笑った。

「ずるい」なんて瑞樹先輩は言うけど、同じ様なことしたじゃない。

夕焼けの光に当たる瑞樹先輩はやっぱり素敵で、隣を歩いてることが嘘みたいに思える。

高く通った鼻も、アーモンド形の二重の瞳も、ほんの少し焼けた頬も、

今繋いでる細くて綺麗な指先だって、

全部全部、1つずつあたしの心を奪ってく。

今日一日一緒にいて、あんなに不安になってたのがバカみたいだった。

そりゃぁ時々あたしだって素が出ちゃったけど、瑞樹先輩は全部笑って許してくれた。

瑞樹先輩はすごく紳士で、優しくて、一緒にいて楽しくて。

拓巳なんかと全然違う・・・大人の男の人だった。



「にしても妃那ちゃんはすごいね。

色んなところでスカウトされるし、割引もしてもらうし」

「皆さんが優しいんですよ」

「妃那ちゃんが可愛いんでしょ?」

「だからそんなことないですって!」



今は帰り道。

乗り換えの駅のホームにいて人が溢れていたけれど、繋いだ手が離せなかった。

帰るのが寂しかった。

もったいない気がした。

他愛もない話が楽しくてしかたなかった。

もう一回、朝(のナンパ後!)に戻りたいと思った。



───好きだなぁ、って。  思った。