「───妃那ちゃん?」
「え!あ、ごめんなさい!その・・・ちょっと、本気で照れちゃって」
不安そうに瑞樹先輩に顔を覗きこまれて本気で照れ笑い。
空いてる方の手で、髪を耳に掛ける。
彼はちょっと面食らったように数回瞬きして、それからクスクスと笑った。
「妃那ちゃんって、男慣れしてるかと思えば結構純粋だよね」
「えー、瑞樹先輩あたしにそんなイメージあるんですか?」
あながち間違ってないけど。というのは心の中でだけ。
むーっと膨れて見せると、「確かに言葉選び間違ったかな」と瑞樹先輩が苦笑する。
「男慣れ、っていうか仲良い男の子が多いっていうか」
「あー、拓巳や海斗君がいるから自然に話しちゃうんですよね」
「なるほどね。本当に4人は仲良いよね」
「腐れ縁ですよ。特に拓巳は」
これだけ一緒にいるのにクラスが違くなったことがないとか逆に奇跡だと思う。
多分「このうるさいのはくっつけときゃいいだろー」なんて先生たちが適当に決めたんだろうな。
(実際、拓巳がクラスに居なくなったらあたしを制御する人は誰もいないと思うけど)
「本当に高校に入って分かれてすっきりしました!
とは言っても迎えに行っちゃったり、一緒にご飯食べたり変わってないって言えば変わってないかもなんですけどね」
まぁ両方ともカッコいい男の子目当てだから、拓巳は無関係と言えば無関係なんだけど。
そんなこと言ったら、『お前なぁ』って言いながらも笑うんだろう。『妃那らしい』って。
目を細めて、ほんの少し右眉を動かす。それが、拓巳の癖だから。
思い出して一人笑っていると、瑞樹先輩が「ふーん」と言いながら立ち止まる。
「・・・瑞樹、先輩?」