七時までに、すべてのことを済ませた。
風呂に入って、夕食を食べて、宿題も終わらせた。
父と、父の同僚がやって来たときには布団に入っていようと思ったのだ。
父も、父の知り合いも、私にとっては他人だ。
他人とは関わりたくなどなかった。
玄関から物音が聞こえだしたのは、七時を少し過ぎたころだった。
私は、すでに布団の中で恒例のように憂鬱を育てている最中だった。
ただでさえ寝つきが悪いのに、えらく騒がしくて眠れそうにない。
耳をそばだてているつもりはないのに、勝手に会話が聞こえてくる。
「さぁ、遠慮せずに」
「すみません、失礼します」
「お邪魔しまーす」
父のほかに男性が数人、そして女性もひとりいるようだ。
ビニールの擦れる音と、硬いものがテーブルにぶつかる音がする。
おそらく、コンビニで買ってきた缶ビールを取り出しているのだろう。
会議にアルコールとは、いいご身分だ。
「後藤さん、たしかお嬢さんがいらっしゃいましたよね?」
若い男性の声がした。
私は寝がえりを打って、居間に背を向けた。
「あぁ……たぶん部屋にいるんだろう。なんせ年頃なものだから扱いにくくて仕方ない。
ずいぶんと嫌われたもんだよ」
「またまた、ご冗談を。社内では若い子にもモテモテの部長が何をおっしゃるんです」
ははは、と笑いが起きる。
驚いた。
父はモテるらしい。