「お前ら、なんだその格好は!」




聞き覚えのある声がして、ふたたび外を見た。


運動場からカナエ達の元へ、誰かが走ってくる。


あれは。




「ヤバい、五十嵐じゃん!」




振り向くと、いつの間にか教室中の生徒が押しつ押されつ身を乗り出して、窓を開け放して外を見ていた。


物好きな野次馬達は白い息を吐きながら、この事件の行方を小波のざわめきで見守っている。


「カナエ達あの格好どうしちゃったの?」


「ついにここまで来た、って感じ?」


「うわぁ。五十嵐、怒りまくってんじゃん」


「どっちが勝つのかな」


なにを面白がっているのだろう。


もめ事に遭遇したときの、この緊迫感が私は嫌いだ。


自分が当事者ではなくでも、世界がどんどん縮んで動けなくなって、息もできなくなる。


それでも気になって見てしまう、裏腹な心理。


恐いもの見たさとは、こういうことか。


なんだかんだ言いながら、私も野次馬のひとりだった。