これには、さすがのアリィも目をむいた。
「ゆっぴー!?今なんて?」
そばにいた売り子のおばさんも、小汚い子供が何を言ったのかしばらく理解できなかったらしいが、
私が財布から諭吉を二人取り出すと、あわてて商品の梱包に取りかかった。
桐の箱に入れられ、その上からしゃれたレースがかけられ、さらにしっかりとした紙袋に納められ、
厳重に守られてメロンは私の手元にやってきた。
ずっしり重い。
この重みが面映ゆい。
「帰って食べよう」
そう言うと、アリィは手を叩き目を輝かせた。
「ゆっぴー、カッコイイ!」
得意げな私と飛びあがって喜ぶアリィを、店員はひきつった顔で見ていたけれど、そんなのどうでもよかった。
このとき私は初めて散財の快感を知った。
アリィが一行日記に予言していたとおり、雲ひとつない快晴。
おかげでまがまがしいほどの太陽光に焼かれながら、それでも私達の足取りは軽かった。
「ねえ、アリィにも持たせて!」
「落とさないでよ」
「きゃあ、重いねぇ!」
テンションが上がりすぎて奇声を発するアリィにも、このときばかりは腹が立たなかった。
私も今までにないほど気分が高揚していたから。
だから、そのせいだ。
暑苦しい蝉の鳴き声が、まったく気にならないのも。
街が色づいて見えるのも。
アリィの言う『親友の証』とやらがバッグで揺れているのが、そんなに嫌ではないことも。