諦めて部屋に戻ろうとしたら ガチャリと扉の開く音がした。 「はい?」 浅黒い肌に緩いパーマをあてた男の人が顔を覗かせた。 「あっあのっそのっ」 緊張を隠せなくて見事にどもってしまう。 「本日引っ越して来ました…ひっ日比野光ですっっ」 ようやく言いきれて ヒーフー深呼吸する。 「あっちょっと待ってね」 笑いを噛み殺した顔をして男の人は再びドアの奥へ消えていった。