自室に到着すると紫水は私をソファーに降し、自分もその横に腰掛けた。



「お前、意外と重いな。

ったく、よけいな手間かけさせやがって」


途端に口が悪くなる。


『ムッ!!

別に抱えてくれなんて私頼んでないもん!!

てゆーか、さっきまでの口調何なのよ!?

それに私、紫水の彼女になった覚えないしっ!!』


紫水の発言にムッとし、一気に捲くし立てる。


「一度にたくさん質問するな」


『何よ、偉そうにしちゃって』


「だってここ俺の家だし」


『は?

そんなの関係ないじゃない。

意味わかんないっ!!』


会話のつながりが全く見えない。



「郷に入っては郷に従えってことわざ知ってるだろ?

親父がいない今、ここでは俺が法律だ」


紫水が微笑みながら言う。

先ほどまでメイドさんたちの前でみせていた笑顔をとは違い、何かをたくらんだような黒い笑いだった。


なっ、なんか怖い……。


『で、でもウソは良くないよ、紫水くん。

ご、誤解されちゃうかもしれないし……』


声が上ずる。

ここまで人を狼狽させる笑みがあっていいのだろうか?