「はいっ。ここが新しい病室ねー」
連れてこられた部屋は前の病室の隣の隣の隣の部屋。
あの部屋が203号室だったからここは206号室。
2人部屋か…。
結構いい感じ♪
まえの大部屋とは違って少し狭いけど…。
向かい合うベッドが2つ。
その横には木でできた収納棚が1つずつ。
収納棚の上にはテレビもある。
すごい…なんか豪華…。
同室が男じゃなければ最高じゃん。
てか個室だったら言うことなしなのに…。
男がいるってことを思い出したらなんか嫌になってきた。
…そういえば。
あたしはふっと気になったことを鈴原さんに聞いてみた。
「同室になる男って何歳なの?」
「んーとねぇ…ちょっと待ってて」
えーと…そう呟きながらポケットに入ってるメモ帳をパラパラとめくる。
「あー…とっ。あったあった。17歳かな?高2ぐらいだね」
「…高2?」
「えぇ。そうだけど…やっぱり無理…?」
高2…高2…
あたしの頭の中は鈴原さんの言った言葉が頭で繰り返されていた。
「鈴原さん知ってるよね?隼人のこと…」
あたしは鈴原さんに向かって言った。
どうして…
「もちろん。だけど…しょがないのよ?我慢して…?」
「…大部屋に戻してよ。高2の男なんかと一緒の部屋なんて絶対いやっ!!」
鈴原さんに対して思いっきり怒鳴った。
信じらんない…
あのことがあってからまだ2年も経ってないのに…
隼人のことがあってから…
「もう決まったことだから我慢して?」
「無理。」
「湊ちゃん…」
「無理ったら無理!!まだ2年しか経ってないんだよ?まだ忘れられないのに…」
「でも…」
「とにかく無理だからっ!!」
あたしはその言葉を残し新しい部屋から出て行った。
もちろん全力で走って。
向かうのはいつもの屋上。
走って走って走って…
あと少しで屋上というところであたしの体は限界を迎えた。
久しぶりにあんなに全力ダッシュしたからだなぁ…
とかのんきなことを考えてる自分に少し笑えた。
ここは病院だからといってあたしが屋上まで行く道には人が全然通らない。
もちろん発作を起こしても誰にも気づいてもらえない。
苦しい…苦しいよ…。