「もう嫌だ」

毎日、毎日、なんで?

コンコン。

部屋の扉がノックされた。

「はい?」

「美名?ちょっといい?」

入ってきたのはお母さんだった。

嫌な予感がする。

「何?」

「お父さんとお母さん離婚する事にしたから。
 美名、どっちについていくか今日中にきめなさい。」

「私は…私はお母さんとも、お父さんとも離れたくない!」

「ごめんね。美名。でもね、お母さんもう無理なんだ」

毎日、毎日、続く喧嘩をみるのは、私も限界だった。

頭では、わかってる。

だけど…嫌なんだ。

「私は…お母さんについていく」

だけど、いつかは決めなきゃならないことなら

早く決めて、楽になりたかった。

それに、

心のどこかでは、こうなる事を覚悟していたんだと思う。

きっと。

そして、私の苗字は変わった。

お父さんの性『山田』から

お母さんの性『多岐』になった。

多岐美名タキミメイになった。