「これで全部ですかねぇ」
「ああ、帰るぞ」
「早くしないと女将にどやされますしねー」
「で、どうしたらこんな大荷物になるんだい?」
女将の視線の先には、
4つの大きな袋。
全て、さっき買ってきたものだ。
「だって、グレイさんが、アイルにおもちゃを…」
「キュールだって買ってただろ」
グレイというのは俺の偽名で、
キュールはサンルドのだ。
訳あって、俺たちは本名を明かせない。
「これ全部、あの子のおもちゃかい?
そんなに金があるんなら、
こんなぼろ宿なんかじゃなくても良いだろうに」
「グレイさんはそういうの苦手なんですよ」
「へぇ…」
女将は興味なさげに言った。
「じゃあ、今日はこれから忙しいんでね。
育児教室は明日で良いかい?」
「悪いが、明日は早く発つんだ。
重要な所だけ教えてくれ」
「仕方ないねぇ…
コレ、弾んでくれよ」
女将は親指と人差し指で輪を作り、
意地悪く微笑んだ。