何処を見ても、≪元人間≫であろう真っ黒な塊。
人間が焼けた、独特の臭い。
気分が悪くなる。
少し歩いて、光るものを見つけた。
近づいて見てみれば、
それは俺が≪彼女≫に贈ったネックレスだった。
という事は、此処が彼女の家ということだ。
綺麗に整理された部屋も、
彼女が愛でていた花も。
―全て、残っていなかった。
俺はネックレスを拾い上げ、
埃を払って懐にしまった。
「……ぅ」
ふと、耳が自分のものではない声を聞き取った。
声がした方へ向かうと、
真っ黒に焼けた塊の傍に、
毛布がぐるぐるに巻かれていた。
…おかしい。
あんなにも燃え盛った炎の中で、
この毛布だけ残ったというのは、
絶対にありえない。