遠くから聞こえる理緒の声…。 振り向くと、傘をさしながら私の方へと走ってくる。 私も咄嗟に走りはじめたけど、理緒の速さに勝てるわけがなくて、あっという間に追いつかれてしまった。 「待てよ……。」 理緒は、息をきらしながら、絞りだすような声で言うと、ガシッと私の腕を掴む。 その反動の強さに、私の手からスルッとクリーム色の紙袋が雨に濡れたアスファルトに落ちた。