シェルが死んで、数日がたった。
表面上は、穏やかな日々。

けれど…。

「カオ…。思い出されましたか?」

きた。

「……」

「カオ?」

あの日、全てを思い出した、と語った私に、肝心なことがまだだ、と言ったのはリヒトだった。
しかし、私は全てを思い出したと思っているし、何が欠けているかも見当がつかない。
それを、毎日毎日毎日…!!「思い出せ」だと、うるさくてたまらない。

「カオ?だか…」

何かを言いかけていたリヒトを遮り、叫ぶ。

「うるさいっっ!!知らないものは、知らない!」

私のストレスは、もう限界値にきていた。

「私は、カオ。永遠の刻を生き、全てを統べるもの…化け物たちの王だ。それ以上何を思い出せという?」

そう。
私は、長い長い時間を生きてきたもの。人間が生まれるよりも以前から、生きてきた。

ずっと、1人で…。

だからこそ、計り知れない力を持ち、吸血鬼や狼男などといった化け物たちを従わせてきた。

分類上は、吸血鬼…ヴァンパイアの始祖にあたるのだが、性質はどちらかというと淫魔に近い。

人間の血液ではなく、性気を好むのだ。

何もかもを忘れていたころには、戻れない。
性気がないと、生きていけない。…まあ、死にもできないけど。