待ち合わせ場所に着いたが、シェルはまだ来てないみたいだ。

ひゅうっと風が一筋吹いた。

約束の時間だ。
そう思った瞬間。

「カオ。お待たせしましたわね。」

シェルが目の前に現れた。
―いつの間に…―

「……シェル…貴方、相変わらずね。」

ため息をつく。
そうだ、シェルはいつも気配なく現れていた。
人がびっくりするのが、面白いそうなのだ。

「あら?思い出されて?」

「ええ。貴女が何かしてくれたのでしょう。」

「あらあら。うふふ…」

可笑しそうにするシェルに苛つく。

「で?話は何?」

さっさと本題に入れとばかりに言い捨てる。

「せっかちさん。でも、そうですね。本題に入りますわ」

クスクス笑いながら、するりと側まで寄ってくる。

ツン、と薔薇のきつい薫りがした。

「私の下僕は、元気かしら。」

は?

訝しげに、眉をよせる。

「あら?その辺はまだ、だったかしら?」

うふふ、と楽しそうに笑うシェル。
対称的に、嫌な予感に冷たい汗を流す、私。

聞きたくない、言葉が。

「リヒトよ」

あっさりと、紡がれる。

世界が、

急に、

色を失う。