カオを見つけたときは、本当に嬉しかった。
探して探して、やっと見つけたのだ。

怒ってるだろうから口を聞いてもらえないかもなぁ…なんて呑気に考えていた。
だが…現実は更に残酷だった。

「カオ？お迎えにあがりましたよ」
いつものように、黒いスーツに白い手袋。
まるで執事のような格好は、カオが『よく似合う』と喜んでくれていたものだ。きっと喜んでくれると思っていた。
のに……

「……?どなたですか。」まるで他人を見るような、その表情に、冷水を浴びたような気分になる。
「カオ？からかっているんですか？」
とても信じられなかった。カオの両腕を掴み、体をゆする。
「カオ？リヒトです!!冗談は、もうやめてください。」
掴む手に力がこもる。
「痛い!!やめてください！人違いですっ」
全力で逃げられて、もう茫然とするしかなかった。