コンコン、と扉をノックする。
「はい。」と中から、低く澄んだ声がする。
いつも丁寧な言葉を話すリヒトさん。
落ち着いた声と話方がとても好きだと思う。

「入ってもいい?」

「カオ？どうかしましたか？」

リヒトさん自ら、扉を開けて招き入れてくれる。

「うん…。」

なんとなく、顔が見たかっただけ…なんて言えない。

静かな空気が流れる。
どうしようかな、と悩んでしまう。

「カオは、ヒカルたちやシェルのことだけ、思い出したんですよね？」

「だけ？他にもあるの？」
「…カオが、全てを思い出すこと。私は、それを願います。」

私の質問には答えず、そう話すリヒトさんの表情は、悟りを開いたような不思議なものだった。

「リヒトさん。私ね…」

そんなリヒトさんが、どうしてだろう…淋しそうに見えた。

ソッと近寄ってみる。
ベッドに座っているリヒトさんを上から見つめる。
リヒトさんの、少し黄色っぽく見える茶色の瞳と目が合う。

「―カオ……?」

「私、ね?リヒトさんのこと…」

だからだろうか？




「すき──」

思わず、言ってしまった。