いつの間にか、寝てしまっていた。
ぼんやりした頭で、時計を見てみると、もう夜中の1時を回っていた。

「…喉渇いた…」

まだ半分目が閉じているような状態で、そう呟いた。 ぼうっとしたまま、台所へ向かう。

静かな廊下にペタペタと足音が響く。
広く長い廊下の先に灯りが見えた。

―リヒトさん？起きてる…

回らない頭で、そう思うと灯りのところまで行ってみる。

灯りが近くなると、ボソボソと話し声が聞こえてきた。
立ち聞きするなんて行儀が悪い、と思いながらも好奇心から、ソッと近寄ってみる。

「──だからか…よけいなことを─」

所々しか聞こえないが、どうやら怒っているみたい。
こんな厳しい声のリヒトさんは、初めてだ。

―もしかしたら、今まで見ていたリヒトさんは、ほんの一部で私の知らないリヒトさんはたくさんあるのかもしれない…

この時、私の中で黒く渦巻く疑惑が、初めて頭の中を支配した。

「──分かった。シェル──」




―シェル？なんで、シェル？…シェルとリヒトさんは関係がある、の？