カオが目を覚ました。

もしかしたら、もう私には笑いかけてくれないかもしれない、と思っていたのに、変わらず笑ってくれた。
「……カオ。」

おそるおそる声をかけてみる。

「リヒトさん。心配かけて、ごめんなさい。」

しゅん、としたその表情は、倒れる前と変わらない無邪気なもの。

記憶は、戻らなかったのか…?
ホッとしたような、残念なような…。

「いいえ。大丈夫ですか?」

いつものように笑顔を見せると、カオもにこり、と笑った。

 サッと視線をさ迷わせたカオは、部屋の隅で心配そうに見ている、2人に目をやった。

ああ。紹介しないと…と、声を出すより先に、カオが嬉しそうな表情を見せる。

パァッと明るくなる表情を見て、なんだか嫌な感じがした。

カオ……

どうして…

もしかして……―