そんな私の反応に、調子にのった青年は、言葉を続ける。

「あの賤しい男!貴女を拐かした、大罪人!」

「……るな…」

「早く離れるべき…」

「しゃべるな!!」

大声で遮ったとき、コンコンと扉を叩く音がした。
すぐに、誰かが入ってくる。

「──!」

誰?
なんで、名前が聞こえない。分からない。顔だけが、モヤがかかったように見えない。

「これは、タリム子爵の御子息さま。」

「ふん!お前に用はないな。」

「そうでございますか。ですが、カオも貴方には用はないようです。…お帰りを。」

子爵と呼ばれた青年は、屈辱に顔を歪ませる。

「無礼な!」

「無礼なのは、どっちさ。さくっと、言われたように帰れよ。」

どこから入ったのか、双子の美しい少年が、すぐ側にいた。

なんだか、ホッとした。
この2人は知っている。