これは私の過去。

ああ。そうだ。
忘れたい、私の過去、だ。







「カオ。ご機嫌麗しいようで。」

片足をひざまずき、頭を下げているのは、見目麗しい青年。

「……誰?」

怪訝な顔をして、一瞥する。
そう、私にはよく、こうやって年頃の男性が顔を見せにきていた。
―親に言われて…

「ああ!これは失礼しました。私の名は…」

「いい。興味ないし。」

皆まで言わせずに、ふいっと視線を外し、その場を去ろうとする。

 しかし、それを遮るように手首を掴まれる。
触られたところから、ザワザワと鳥肌がたってくる。
「カオ。そんなツレナイこと言わずに…」

「触るな!!」

掴まれた手首を、思いきり振り切る。

青年がビクッと、体を固まらせる。
睨むような、私の視線がそうさせたのだろう。
私には、そういう力がある。
有無を言わせずに、他人を従わせる…そういう力。

冷ややかな視線を少しやり、再び視線をはずす。
背後で、クッと悔しそうな声を出した青年は、悔し紛れみたいに叫ぶ。

「貴女はっ!その高貴な血を、あの男で汚すつもりですかっ」

ピクッと体が反応する。