「わかった。すぐにそっちに向かうよ。」

要件を全て聞くと、事務的に電話を切った。
隣でショウが、心配そうにこちらを見ていた。

「今のところ、心配ないみたいだよ。…でも…まあ、念のために、ね」

カオがシエルに会った、と連絡が入ったときは、居ても立ってもいられなくなった。

過去に、シエルがしたことを考えれば、無理もないけど…。

「……ヒカル。俺は、間違ったか？」

ショウは、しゅんとして呟いた。
『記憶をなくしたカオに、普通の生活をさせてあげたい』と言ったのは、ショウだ。
けれど、それは僕も賛成したこと。

「間違ってないよ?ショウ。間違ってない。」

誰も、間違ってなんかない。
きっと…シエルさえ。

思いが深すぎて、方法が分からないだけだ。


………きっと。