女性は、すぐ近くまでくると、私の顔を覗きこむ。

「ご機嫌よう。お姫様」
クスクス笑う、その顔は妖艶で美しく、怖いはずなのに、魅了されていく。


頭の中にモヤがかかりはじめる。

ぼうっとしたまま、目の前の女性を見つめる。

「どうしたのかしら?お姫様?」

綺麗な細い指がのびてくる。
冷たい汗が流れてくる。
怖さのあまり、ギュッと目をつむった。

その時、私の前に大きな黒い影が立ち塞がった。

急に目が醒めたように、頭がクリアになる。
黒い影は、私を守るように立っている。

「…リヒトさん…」
見上げると、軽く振り向き、微笑みをくれる。
まるで、安心していいよ、と言ってるようで。

ホッと息をつく。
リヒトさんは、前にいる女性を殺しそうな勢いで睨み付ける。

「何をしている…っ」