「つまらない。」
それが口癖だったように覚えている。
「…そうですか。」
薄く笑い、そう答えるのが常だった。ああ、変わらない、そう思った。
窓辺に座る姿。月の光が妖しく射し込み、彼女の顔を照らす。
青白い皮膚に、目元に影をつくる長い睫毛。その睫毛が縁取る大きな瞳は、少し潤んでいて魅惑的だ。かとおもえば、鼻筋の通った高い鼻は、ツンとしていて、あまのじゃくの子供を思わせた。
「リヒト。」
「はい?」
顔を窓のほうに向けたまま、声をかけてくる。
「でかける。」
ボソリと呟いた声は、いつもより楽しそうだ。
私は、眉間にシワがよるのを感じて、慌て笑顔をつくった。
「…また、彼のところですか?」
「関係ない。」
「あまり、深入りするのもどうかと…」
「ウルサイ。私は、お前に了解を求めてはない。」
今宵、はじめて私の方を向き、強い視線を放つ。
何人足りとも、逆らうことを是としない、強い強い眼。私に逆らう術がないことを思い出させる。
「…はい」
そう返事をした私を、ジッと見たあと、視線をまた窓に戻した。
「…お前は、きっと何も変わってないんだろうな…」呟いた言葉は、宙を舞い、私の耳には届かなかった。
「何を怒ってるのかと思えば、やっぱり彼関係か」フッとバカにしたように笑われた。
ムッとしたので、言い返してみた。
「やっぱりって何よ!それに私怒ってないし。」
フンッとそっぽをむく。
「そっか。怒ってないか。ごめんな?」
苦笑しながら、頭を撫でられる。敵わないなぁ、と思うのはこんなところだ。まるで自分が幼い子供になったみたいで、折れるしかない。
「相変わらず、ずるいなぁ…」
怒れないよ、と笑う。
「そう?」
柔らかく笑う、その表情が好きだ。
「ねぇ、タケル…もう、いいよね?」
渇いた唇を舌で潤し、誘う。ゆっくり近付き、ふわりと抱きつく。
「…カオ。止めたほうがよくない?…リヒトくんは?」
「リヒトは関係ないっ!」
最後の名前に過剰に反応してしまった。
「……」
そんな様子を見て、タケルは溜め息をつき、少し強めに抱き締めてくれる。
―タケルの、優しいところが好きだ。…リヒトは、優しくない。―
タケルは、そのまま肩を抱き、寝室に誘ってくれる。その優しさに、甘えるように身体を預けて、ホッと息をついた。
それが口癖だったように覚えている。
「…そうですか。」
薄く笑い、そう答えるのが常だった。ああ、変わらない、そう思った。
窓辺に座る姿。月の光が妖しく射し込み、彼女の顔を照らす。
青白い皮膚に、目元に影をつくる長い睫毛。その睫毛が縁取る大きな瞳は、少し潤んでいて魅惑的だ。かとおもえば、鼻筋の通った高い鼻は、ツンとしていて、あまのじゃくの子供を思わせた。
「リヒト。」
「はい?」
顔を窓のほうに向けたまま、声をかけてくる。
「でかける。」
ボソリと呟いた声は、いつもより楽しそうだ。
私は、眉間にシワがよるのを感じて、慌て笑顔をつくった。
「…また、彼のところですか?」
「関係ない。」
「あまり、深入りするのもどうかと…」
「ウルサイ。私は、お前に了解を求めてはない。」
今宵、はじめて私の方を向き、強い視線を放つ。
何人足りとも、逆らうことを是としない、強い強い眼。私に逆らう術がないことを思い出させる。
「…はい」
そう返事をした私を、ジッと見たあと、視線をまた窓に戻した。
「…お前は、きっと何も変わってないんだろうな…」呟いた言葉は、宙を舞い、私の耳には届かなかった。
「何を怒ってるのかと思えば、やっぱり彼関係か」フッとバカにしたように笑われた。
ムッとしたので、言い返してみた。
「やっぱりって何よ!それに私怒ってないし。」
フンッとそっぽをむく。
「そっか。怒ってないか。ごめんな?」
苦笑しながら、頭を撫でられる。敵わないなぁ、と思うのはこんなところだ。まるで自分が幼い子供になったみたいで、折れるしかない。
「相変わらず、ずるいなぁ…」
怒れないよ、と笑う。
「そう?」
柔らかく笑う、その表情が好きだ。
「ねぇ、タケル…もう、いいよね?」
渇いた唇を舌で潤し、誘う。ゆっくり近付き、ふわりと抱きつく。
「…カオ。止めたほうがよくない?…リヒトくんは?」
「リヒトは関係ないっ!」
最後の名前に過剰に反応してしまった。
「……」
そんな様子を見て、タケルは溜め息をつき、少し強めに抱き締めてくれる。
―タケルの、優しいところが好きだ。…リヒトは、優しくない。―
タケルは、そのまま肩を抱き、寝室に誘ってくれる。その優しさに、甘えるように身体を預けて、ホッと息をついた。