トン…







すると、前を向いてなかったせいで

誰かにぶつかってしまった。





「あ…ごめんなさ…」


「あれ、未裕ちゃん…?」







…え?



何処かで聞いたことのある声が頭からふりかかる。



誰だか気になって思わず顔を上げた。





「あ…金沢さん…」



「え…」




私の目を見て、固まってしまった金沢さん。



あ…涙で目が…



気づいた私はとっさに服の袖で涙をぬぐった。





それを見た金沢さんは私に優しく微笑んだ。



「よかったら、俺の店おいで」




その声が優しすぎてまた泣きそうになる。




多分、金沢さんは一瞬で理解したんだろう。



私の泣く理由を…









──…


「あ、あの…いいんですか?仕事に行かなくて…」




少し落ち着いた私は金沢さんに連れられ、


店内ではない、個室に通されていた。




「ああ、親父にここ使っていいって了承得たから大丈夫」



「そうですか…」




とはいいつつも、やっぱりあまり馴染みがない人と2人きりは緊張するし、落ち着かない。



しばらくして、金沢さんが私に言った。







「祐也の側にいたいと思う?」



…?





いきなりの質問の意味が解らなくて、首をかしげた。