『苗〜、あんたまた昨日も泣いたでしょ〜?』


「だってさあっ」


昨日、あれからずっと泣き続けたあたしは、赤く腫れた目のまま登校した。



『あ〜あ。ひどい顔だ〜。』


そう言うこの子は、親友の
栗野 七実(くりの ななみ)


あたし達が倦怠期なのを知っているのはこの子だけ。


あたしは毎日のようにこの七実に相談している。

「もうこんなのやだよ〜。」


うなだれるあたし。


『まさか苗たちに倦怠期がくるとはね〜。』


「七実〜、どうすればいいと思う〜?」


『…あたしも何て言っていいか……。』



そんなぐだぐだな気持ちのまま、また放課後になる。





『ほら〜、早く行きなよ〜。』


「う〜ん…」


下駄箱の影からチラッと見ると、壁にもたれかかり、携帯をいぢりながらあたしを待っている宏人の姿が見えた。



そして何故かまた下駄箱の影に隠れるあたし。


『何隠れてんの〜?宏人くん待ってんだからさあ。』


あきれた様子で七実が言う。


「でもさ〜…」

どうせ今日も無言だし…。


『でもさじゃないっ。ほら苗〜。』


七実はあたしをぐいと引っ張り、


『はい。今日はちゃんと何か話すんだよ!』


そう言うと、あたしの背中をポンッと叩き、どこかへ行ってしまった。