『「ハァッハァッ…っ」』

どのくらい走っただろう。


『ハァッ…っ。ここまで来れば大丈夫だろ。』


宏人は肩で息をしながらそう呟き、手で汗を拭った。


こんなに近くで見るの、何ヶ月ぶりだろう…。

髪、少し伸びたな…。



「宏人………?」

『ん?』

「………ありがとう。」

『ん。つーか、太郎が気付いてくれたからな…。』


そう言って宏人は太郎を撫でた。


「そうだね…。太郎、ありがとう。」


あたしも太郎の頭を撫でる。


『今度からあーゆう奴には気をつけろよ?』


宏人はあたしの頭をポンと叩いた。


「………ん。分かった。」


涙が出そうになった。


宏人がただ隣にいることにホッとして…。


あの時、

怖くて怖くて怖くて……。


今でもまだ手足がガタガタ震えてる。



『…苗、大丈夫?帰れる?』


「うん、平気…。ほんとありがと……。」


あたしは必死で震える手を隠した。


もうこの人に頼っちゃダメだ。


あたし達は別々の道を歩き始めたのだから……。


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