そこにいたのは…

「…宏人……。」



先輩はムクっと起き上がり、宏人を思いっきり睨む。


『……てめー…ざけんじゃ…』

『何してんですか先輩。』


聞こえてきたのは、今まで聞いたことのないような低くて、怒った宏人の声…。




『…ふっ……』

先輩は少し笑みを浮かべながら立ち上がった。


『今さあ、いいとこだったんだよね。』

そう言いながら宏人の方に歩いていき、胸ぐらをつかんだ。


そんな先輩を睨み続ける宏人。


『邪魔すんじゃねえよ……!』


先輩はそう言い、宏人を思いっきり殴った。



『………っ…。』

その反動でよろける宏人。


「……宏人…!」

あたしはこの状況が理解できず、ただ手足がありえないくらいに震えていた。



先輩はまた宏人に向かって歩いていき、胸ぐらを掴む。




……誰か…

来て…

宏人…死んじゃうよ…………



睨み合う宏人と先輩。



その時


ゴフッ

宏人の空いていた右腕が先輩のみぞおちに入った。


『…………っく……』

みぞおちを抑え、苦しそうに唸る先輩。




次の瞬間

『…苗…っ!』

太郎を抱きかかえ、宏人の手があたしの腕を掴んだ。


「……えっ…!?宏人……?」

『…いいから走るぞ…っ!』

そのまま宏人とあたしは走り出した。



_