――ワンッワンッワンッ。


その時、一匹の犬がこっちにむかって走ってきた。


『んだよ。この犬…っ!』


その犬は必死にあたし達にむかって吠え続ける。

……毛並みの整った茶色い毛。

赤と白の水玉柄の首輪。


………この犬…どこかで…




その時、公園の入口の方から誰かの足音が聞こえてきた。

『おいっ!太郎お前どこ行ってんだよ!』


……そうだ。


この犬…


あの人の……

大好きだったあの人の……




「ひろ…っ!」

名前を叫ぼうとした瞬間、先輩に口をふさがれた。


「んん〜…っ!」

『黙ってろっつてんだろ…?』


口をふさぐ手が強くなる。


…息が…できない…。

……助けて…助けて……

……ひ…ろと…




その時…

バコッ……

鈍い音と共に、あたしの視界から先輩が消えた。


『…え……?』