私は私を抱き締める先輩から離れて、ゆっくりと握った手を開いた。
「詩織、昨日、俺が言ったこと覚えてる?」
「……好きな人に、ボタンを渡す…?」
「正解。だから…」
先輩は私の涙を指で拭いて、また私を抱き締めた。
「先輩?」
状況が……飲み込めない…
「だから、分かる?詩織。俺の好きな人」
「え…」
「それねぇ、俺の第2ボタンだよ」
そう言うと、先輩はブレザーのボタンがない場所を見せて笑った。
「…う…そ…」
「嘘じゃないよ。詩織、好きだよ。泣かせちゃって、ごめんな」
「…う…そ。先輩…」
「だからぁ~!嘘じゃないって!どうしたら信じる?」
先輩はそう言うと、眉毛を下げて、困ったようにうーんと唸った。
「あ!分かった!」
「?」
何何何!?
「詩織、目、瞑って」
「へ!?」
「早く!」
「あ、はい」
突然過ぎる先輩の言葉に、私は素直に応じ、目を瞑った。