「…先輩…?」



私は首を傾げる。



何なの…?




「…ボタン…かぁ。うちの学校ってブレザーで2つしかボタンがないんだけど、男子は毎年第2ボタンを好きな子にあげてるんだってさ!」



「はぁ…」



「だから…俺も…」



「……」



「あげるのは……好きな子だな…」



「……」




サーッと春の風が吹いた。




その風は、春風なのに……


まるで私の心をどんどん冷やすみたいに……




冷たかった…





「……あはっ、先輩、好きな人いたんですね!そりゃあそうか!三年生の女子、みんな美人ばかりだから!」



「…詩織?」



「あはは!…っ明日…ボタン…わ……たせると、いいですね…」



「……詩織…」



「っ……じゃあ…」



「詩織!!」



私は泣いているのを見られたくなくて、走って駅の改札を抜けた。




まるで、逃げるみたいに電車に飛び乗って、周りも気にせずに一人で涙を流した。