うわ~…
手汗が半端じゃない。
私は、汗をかいた手でスカートをギュッと握り締めた。
「詩織?」
何も言わないで立っている私を不思議に思ったのか、先輩は自転車を降りて
私の元へと来てくれた。
「詩織?どした?」
いつもの優しい笑顔で私の顔を覗き込む先輩。
ち…近い…
「詩織~?」
「っ…」
私は、涙が溢れそうになるのをこらえて先輩の目を真っ直ぐに見つめた。
「…先輩」
「おう」
「先輩は、制服のボタンを誰かにあげるんですか…?」
やっと、言いたかったことが言えた。
ただ、心臓はドキドキじゃなくてバクバクと音をたてている。
私は震える唇をキュッと結んで、先輩の返事を待った。
先輩は少しの間、驚いたような表情をしていたけど、すぐに“ふっ”と笑って私の顔を覗き込むのを止めた。