キッーー
「着いたよ」
「…すみませんでした……」
「ううん。こっちこそ」
先輩はそう言って微笑むと、自転車にまたがって笑った。
「じゃあな!!次は……卒業式の練習か…」
「はい……」
「テストあるから、風邪ひくなよ!!」
「はい…」
「ククッ…じゃあな!」
「さようなら…」
先輩は、左手を軽く挙げて自転車のペダルを漕ぎ始めた。
どんどん小さくなっていく先輩の背中。
嫌……
行かないで…
先輩……
私は、胸の前で両手をギュッと握りしめた。
「あっ!詩織……って…泣いてるの…?」
沙也香が私を見つけてこちらへ駆けつけた。
「……っ…ごめん…」
私はゴシゴシと目を擦りながら沙也香に微笑んだ。
「泣かないでよ…っ…。私まで泣きたくなる~」
ワーッと二人で泣いた。
駅だから、たくさんの人が見ているけど、お構いなしに二人で泣いた。